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2025.10.24

新たな障害福祉サービス「就労選択支援」について

1 就労選択支援とは
 令和7年10月より、改正障害者総合支援法が施行され、新たな障害福祉サービスである「就労選択支援」が始まりました。これまでの訓練等給付は「就労移行支援」、「就労継続支援」、「就労定着支援」の3パターンでしたが、新たに4パターン目が加わった形となります。
 就労選択支援は障害者が就労先・働き方についてより良い選択を行うための支援を行う事業です。既存の就労支援系の事業所で使用される就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望や障害特性、就労能力や適性等を考慮して最善の就労先を選択できるように支援を行います。
  就労移行支援 → 就職のための知識・技術の習得支援、相談等を行う
  就労継続支援 → 精算活動等の機会の提供や就労に必要な能力の訓練を行う(A型・B型)
  就労定着支援 → 通常の事業所に雇用された障害者が事業所に定着できるよう相談等を行う
  就労選択支援 → 障害者が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう支援する

2 就労選択支援の対象者
 就労選択支援の対象者は「就労選択支援は、就労移行支援又は就労継続支援を利用する意向を有する者及び現に就労移行支援又は就労継続支援を利用している者」です。注意を要する点としては、就労継続支援B型の利用条件に「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」という要件が追加されたことです。これにより、就労支援B型事業所の利用を希望する方は、原則としてまず先に就労選択支援を利用する必要があります(令和9年4月からは就労支援A型の利用希望者にも拡大されます)。なお、例外として50歳以上や障害基礎年金1級受給者当等はこの条件が求められず、他にも近隣に就労選択支援事業所がない場合には就労選択支援事業所による就労アセスメントが必須ではなくなるなどの特例もあります。

3 就労選択支援の内容
 就労選択支援事業がおこなう支援は以下の通りです。
・ 短期間の生産活動等を通じて就労に関する能力や意向等の整理(アセスメント)をおこなう
・ アセスメント結果の作成に当たり、利用者及び関係機関の担当者等を招集して多機関によるケース会議を開催し、利用者の就労に関する意向確認を行うとともに担当者等から意見聴取をおこなう
・ アセスメント結果を踏まえ、必要に応じて関係機関等との連絡調整をおこなう
・地域の就労支援に係る社会資源や雇用事例等に関する情報収集、利用者への進路選択に資する情報提供をおこなう

4 事業所の基準等
 就労選択支援の指定基準で主たるものは以下の通りです。
 ・従業員(就労選択支援員)の配置は常勤換算で15:1
 ・就労選択支援員として認められるには養成研修を終了する必要がある
 ・個別支援計画の作成は不要、 サービス管理責任者の配置は求めない
 ・一定の条件の下、一体的に運営される就労支援事業所の職員が就労選択支援員を兼務可能
 ・訓練・作業室、相談室、洗面所、便所及び多目的室その他運営に必要な設備を専ら当該就労選択支援事業所の用に供するものとして設ける必要があるが、支援に支障がない場合には他の就労支援系事業所の設備を流用できる(安易な流用はNG)

5 就労選択支援の実施主体
 就労選択支援の実施主体は「実施主体は、就労移行支援又は就労継続支援に係る指定障害福祉サービス事業者であって、過去3年以内に当該事業者の事業所において合計3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたものその他のこれらと同等の障害者に対する就労支援の経験及び実績を有すると都道府県知事が認める事業者」です。
 厚労省の資料によれば「これらと同等の障害者に対する就労支援の経験及び実績を有すると都道府県知事が認める事業者」の例としては、「障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体設置の就労支援センター又は障害者能力開発助成金による障害者能力開発訓練事業を行う機関であって、要件①を満たすもの」が挙げられています。

6 就労選択支援の事業者報酬
 就労選択事業者の報酬は1日当たり「1,210単位」です。サービス提供日に直接支援を行った日ごとにこの報酬が請求できます。直接支援を行う事が条件になりますので、関係機関の調整といった利用者が同席しない業務を行った場合には対象外となります。
 就労選択支援に特有の加算はありませんが、「特定事業所集中減算(200単位/日)」があります。これは就労選択支援事業所を経て利用者が就労移行支援や就労継続支援を利用した際に、正当な理由なく当該就労選択支援事業と就労移行・就労継続支援事業が同じ事業者によって提供されている場合(利用した就労移行・就労継続支援事業の80%以上が同じ事業者である場合)に適用される減算です。対象の期間は1年を1月を基準に6か月ごと2つに分けた期間になります。この減算が適用されると、その期間満了の3か月後から6ヶ月間、すべての就労選択支援に対して減算が適用されます。
 報酬の支給決定期間は原則1ヵ月ですが、時間をかけて継続的な作業体験を行う必要があるといった場合には2か月の支給決定が行われる場合もあります。

7 就労選択支援に関するご相談
 就労選択支援事業は制度が開始されたばかりであり、事業者としての指定やサービス内容、配置基準等に関しても実務上の運用が固まっていない部分が生じる可能性があります。具体的には、対象者が就労選択支援を利用しなければならないことについての例外適用の判断や特定事業所集中減算の適用に際しての「正当な理由」の判断、設備に関して既存の設備を利用することで「支障があるか否か」といった抽象的な部分に際して事業主の見解と所轄庁の見解が分かれることも想定されます。弊所ではこのような見解の対立やその他の規制への対応に際して弁護士が法的な知見からサポートを行う事が可能です。就労選択支援事業の実施をご検討の方はお気軽にご相談ください。

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