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2025.3.10

【eスポーツと福祉】 大会開催の留意点

eスポーツを用いた就労継続支援においては実況解説コースなどを設けている事業所もあります。本稿では、利用者だけではなく、一般参加者も募る形で就労継続支援施設が主催となり、eスポーツの大会を開催する場合の留意点について解説します。 大会フォーマット  大会の開催にあたっては当然その大会の基本的な事項を決定する必要があります。どのようなゲームを用いるのか、トーナメント・リーグの別、日程や場所(オンライン、オフラインの別)、レギュレーション、賞品や景品、参加費といった外部向けのフォーマットに加え、施設内部でも職員や利用者の役割分担や当日の動き、大会開催許可等の事務手続等の検討も必要になります。また、運営規程や施設利用契約において大会の開催、参加が可能である必要がありますので確認するようにしましょう。  就労継続支援事業所での大会開催は、オフライン・オンラインのどちらであっても特有の問題が発生します。例えば、オンラインであれば当日確実に人数が集まるかという基本的な問題に加え、施設外で大会を行う場合には施設外就労とするための各種制約(業務委託・請負等の契約関係等)についても事前に検討することになります。逆に、オンライン開催であれば開催に必要な人数を抑えることができるものの、PCをはじめとする機材の操作や遠隔で参加する参加者同士の連絡調整が必要になり、対面での開催とはまた違った特有のスキルが求められる場合があります。  なお、オフラインで大会を行う場合、「利用者の就労や生産活動への参加等をもって一律に評価する報酬体系」を採用する施設であれば地域協働加算を利用できる場合があります。 大会開催の規約  大会の開催にあたり、何らかのゲームを使用する場合には、各種企業が制約や開催ルールについて定めたガイドラインを公開しています。申請の有無や参加費・賞金の上限額の他、大会のスポンサーについても制限を設けている場合がありますので事前に確認するようにしましょう。また、景品表示法に代表される国内法の規制も併せて確認が必要です(後述します)。  一方で、大会の参加者に向けた規約の整備も行う必要があります。大会フォーマットをどのように設定するのかにもよりますが、参加から終了までの一連の流れを定めた基本的なルールは作成した方が良いでしょう。特に撮影や配信、SNSへの投稿に関しては施設側の特性もあり、これを無制限に自由に認めるかは検討の必要があります。逆に施設側の広報として写真や動画を利用する場合にもこのような大会規約によって事前に参加者からその旨の同意を得ておくほうが安全です。 法規制について 日本におけるeスポーツ大会の開催に当たっては賭博罪や景品表示法、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の問題があげられますが、これらはいずれも参加者に賞金を支払う場合に問題となるものです。したがって、大会の結果に対して賞金や賞品を支払わなければ基本的にはかかる問題は生じません。また、詳細は割愛しますが、賞金・賞品を出す場合であっても、フォーマットに注意し、必要な準備・手続さえ行えば基本的にこれらの問題は回避しえます。 その他、大会開催の場所に関しては、興行場法に注意する必要があります。これは行政の許可を義務付ける法律であり、自施設で大会を開催する場合に検討が必要になるものです。一般的には高頻度で大会を行わなければ許可は不要と考えられますが、大会の開催・運営を自施設の強みとして展開していきたい場合には別途検討が必要となりますので注意が必要です。

2025.3.10

公益法人と「特別の利益供与の禁止」

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下「公益認定法」)は、公益認定の基準の1つとして「その事業を行うに当たり、社員、評議員、理事、監事、使用人その他の政令で定める当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであること。」(公益認定法第5条3号)、「その事業を行うに当たり、株式会社その他の営利事業を営む者又は特定の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し、寄附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること。」(公益認定法第5条第4号)という定めを置いています。この定めは一般に「特別の利益供与の禁止」と呼ばれ、公益財団法人または公益社団法人(以下、総称して「公益法人」)から構成員や他者への利益の移転について一定の制限を設けているものです。 本稿では、「特別の利益」とは何か、「特別の利益供与」に該当するとはどのような場合を指すのかについて解説、検討します。 1 「特別の利益供与」の判断基準概説  公益認定法における特別の利益について公益認定当ガイドライン(以下「ガイドライン」)では、以下のような説明がなされています。  「『特別の利益』とは、利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業の内容や実施方法等具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与その他の優遇がこれに当たり、申請時には、提出書類等から判断する。」  この説明からわかるように、公益法人から利益の移転があった際に、それが「特別の利益」に該当するか否かは当該利益の移転について個別具体的に検討することになります。このとき、ガイドラインの同記載によれば「利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模」、「事業の内容や実施方法等具体的事情」を考慮されることになります。 2 「特別の利益」とはなにか  まず「特別の利益」における「利益」には、金銭、物品といった明らかに財産的価値のあるものものに限られず、人的資源や取引における優遇等の一見して直ちに財産的価値を有するとはいえないものも含まれると考えられます。  公益法人informationによると「公益法人の財産は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的として、公益目的事業に使用されるべきものであり、公益法人から他の団体等に社会通念上不相当な利益が移転し、受入先において財産を営利事業や特定の者のために使用されることは適当ではありません。また、公益法人が寄附により受け入れた財産を社員、理事等の法人の関係者や営利事業を営む者等の特定の者の利益のために利用されることが認められると、公益法人に対する信頼が損なわれ、国民からの寄附の停滞を招くおそれもあります。」とされており、「利益」を「財産」に限定していません。これはガイドラインにおける上記の記載も同様です。また、「国民の信頼の維持」も同規制の趣旨だとすると、財産の移転以外にも法人の信頼を低下させるような利益の移転は防止する必要がありますので、「利益」を「財産」に限定していないものと思われます。    次に「特別」とはどのようなものを指すのでしょうか。  前掲ガイドラインの定義によると「利益の供与その他の優遇」が「社会通念に照らして合理性を欠く不相当な」ものであることを指す、と定義することができます。また、同ガイドラインが「利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、」と記載していることから、「特別」と言えるか否かの判断においては金額の大小といった利益の規模が相当かという観点だけではなく、「誰に対して利益を与えるか」という相手方の選定が相当かという観点からも判断されるものと言えます。 もっとも、「社会通念に照らして合理性を欠く」という基準は抽象的で、明確に何が該当するのかの判断は最終的には監督官庁の判断に委ねられることになります。この点について、国税庁が法人税に関する通達で、「特別の利益を与えること」について次のような類型を例に挙げています。 (1) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。  (2) 法人が、特定の個人又は団体に対し、無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けていること。  (3) 法人が、特定の個人又は団体に対し、その所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。  (4) 法人が、特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。  (5) 法人が、特定の個人又は団体の所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。 (6) 法人が、特定の個人に対し、過大な給与等を支給していること。 (「法人税基本通達1-1-8 非営利型法人における特別の利益の意義」より引用。下線は筆者)  このような類型を見てみると、表現の差はあれど、基本的には「通常の取引に比べて法人が損をする」ような取引がこれに該当するとされています。そうすると、「特別の利益」における「特別」とは「通常に比べて法人が損をする」といえるような取引かどうか、がこの1つの基準であると言うことができるように思います。 3 「特別の利益供与」に該当するかの判断基準  上記の通り、特別の利益供与に該当するかは、「通常に比べて法人が損をする」といえるか、という観点を検討の出発点として検討することになります。取引であれば当該地域・分野の取引相場と比べて当該取引の金額が高いのかどうか、給与や役員報酬等であれば同規模の他の法人や株式会社と比べてその金額が妥当であるのか、といった観点から検討します。  もっとも、最終的にその利益が「特別」に該当するかどうかは「社会通念に照らして合理性を欠く不相当なもの」に該当するかに基づくため、「通常に比べて法人が損をする」と言える場合には、その次のステップとして「通常の場合と当該利益供与との差について、社会通念上合理的なといえるか」という観点から検討することになります。  例えばある取引先に対して業務委託を行うとした場合、他の業者に比べてその取引先への業務委託費が高額であったとしても、その取引自体に法人の事業の広告効果があり、他の業者の委託費との差を補って余りあるほどの集客効果が見込める、といった場合には他の業者との差額は社会通念上合理的なものということができるので、この取引は特別の利益供与に該当しない、と考えることができる可能性があります。 4 さいごに  本稿では特別の利益供与についてみてきましたが、一義的に明確な判断基準がない以上は安易に特別の利益供与の該当性の有無を判断することは危険です。実務的にはまずもって「通常に比べて法人が損をする」かどうかを基準に、これに該当する場合には専門家や所轄庁に判断を仰ぐことが無難なものと思われます。
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